或る日例のごとく吾輩と黒は暖かい茶畠(ちゃばたけ)の中で寝転(ねころ)びながらいろいろ雑談をしていると、彼はいつもの慢話(じまんばな)しをさも新しそうに繰り返したあとで、吾輩に向って(しも)のごとく質問した。「御めえは今までに鼠を何匹とったがある」智識は黒よりも余程発達しているつもりだが腕力と勇気とに至っては底(とうてい)黒の比較にはならないと覚悟はしていたものの、この問に接したる時は、さすがに極(きま)りが善(よ)くはなかった。けれども実は実で詐(いつわ)る訳には行かないから、吾輩は「実はとろうとろうと思ってまだ捕(と)らない」と答えた。黒は彼の鼻の先からぴんと突張(つっぱ)っている長い髭(ひげ)をびりびりと震(ふる)わせて非常に笑った。元黒は慢をする丈(だけ)にどこか足りないところがあって、彼の気焔(きえん)を感したように咽喉(のど)をころころ鳴らして謹聴していればはなはだ御(ぎょ)しやすい猫である。吾輩は彼と近付になってから直(すぐ)にこの呼吸を飲み込んだからこの場合にもなまじい己(おの)れを弁護してますます形勢をわるくするのも愚……(内容加载失败!)
(ò﹏ò)
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