(うち)へ帰ると座敷の中が、いつになく春めいて主人の笑い声さえ陽気に聞える。はてなと明け放した椽側から(あが)って主人の傍(そば)へ寄って見ると見馴れぬ客がている。頭を奇麗に分けて、木綿(もめん)の紋付の羽織に倉(こくら)の袴(はかま)を着けて至極(しごく)真面目そうな書生体(しょせいてい)の男である。主人の手あぶりの角を見ると春慶塗(しゅんけいぬ)りの巻煙草(まきたばこ)入れと並んで越智東風君(おちとうふうくん)を紹介致候(そろ)水島寒月という名刺があるので、この客の名前も、寒月君の友人であるというも知れた。主客(しゅかく)の対話は途中からであるから前後がよく分らんが、何でも吾輩が前回に紹介した者迷亭君のに関しているらしい。
「それで面白い趣向があるから是非いっしょにいとおっしゃるので」と客は落ちついて云う。「何ですか、その西洋料理へ行って午飯(ひるめし)を食うのについて趣向があるというのですか」と主人は茶を続(つ)ぎ足して客の前へ押しやる。「さあ、その趣向というのが、その時はにも分らなかったんですが、いずれあの方(かた)のですか……(内容加载失败!)
(ò﹏ò)
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