それから約七分くらいすると注文通り寒月君がる。今日は晩に演舌(えんぜつ)をするというので例になく立派なフロックを着て、洗濯し立ての白襟(カラー)を聳(そび)やかして、男振りを二割方げて、「少し後(おく)れまして」と落ちつき払って、挨拶をする。「さっきから二人で待ちに待ったところなんだ。早速願おう、なあ君」と主人を見る。主人もやむをず「うむ」と生返(なまへんじ)をする。寒月君はいそがない。「コップへ水を一杯頂戴しましょう」と云う。「いよー本式にやるのか次には拍手の請求とおいでなさるだろう」と迷亭は独りで騒ぎ立てる。寒月君は内隠(うちがく)しから草稿を取りして徐(おもむ)ろに「稽古ですから、御遠慮なく御批評を願います」と前置をして、いよいよ演舌の御浚(おさら)いを始める。
「罪人を絞罪(こうざい)の刑に処すると云うは重(おも)にアングロサクソン民族間に行われた方法でありまして、それより古代に溯(さかのぼ)って考えますと首縊(くびくく)りは重に殺の方法として行われた者であります。猶太人中(ユダヤじんちゅう)に在(あ)っては罪人を石を抛(な)げつ……(内容加载失败!)
(ò﹏ò)
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