「鼻の中の白髪は見えんから害はないが、脳が――ことに若い女の脳がそんなに禿げちゃ見苦しい。不具(かたわ)だ」
「不具(かたわ)なら、なぜ御貰いになったのです。御分がきで貰っておいて不具だなんて……」
「知らなかったからさ。全く今日(きょう)まで知らなかったんだ。そんなに威張るなら、なぜ嫁にる時頭を見せなかったんだ」
「馬鹿なを!どこの国に頭の試験をして及したら嫁にくるなんて、ものが在るもんですか」
「禿はまあ我慢もするが、御前は背(せ)いが人並外(はず)れて低い。はなはだ見苦しくていかん」
「背いは見ればすぐ分るじゃありませんか、背(せい)の低いのは最初から承知で御貰いになったんじゃありませんか」
「それは承知さ、承知には相違ないがまだ延びるかと思ったから貰ったのさ」
「廿(はたち)にもなって背(せ)いが延びるなんて――あなたもよっぽど人を馬鹿になさるのね」と細君は袖(そで)なしを抛(ほう)りして主人の方に捩(ね)じ向く。返答次ではその分にはすまさんと云う権幕(けんまく)である。
「廿(はたち)になったって背いが延びてならんと云う法はあるまい。……(内容加载失败!)
(ò﹏ò)
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