正文 四 - 9

「君は一生旅烏(たびがらす)かと思ってたら、いつの間(ま)にか舞い戻ったね。長生(ながいき)はしたいもんだな。どんな僥倖(ぎょうこう)に廻(めぐ)り合わんとも限らんからね」と迷亭は鈴木君に対しても主人に対するごとく毫(ごう)も遠慮と云うを知らぬ。いかに炊の仲間でも十年も逢わなければ、何となく気のおけるものだが迷亭君に限って、そんな素振(そぶり)も見えぬのは、えらいのだか馬鹿なのかちょっと見がつかぬ。

「哀そうに、そんなに馬鹿にしたものでもない」と鈴木君はらず障(さわ)らずの返はしたが、何となく落ちつきかねて、例の金鎖を神経的にいじっている。

「君電気鉄へ乗ったか」と主人は突鈴木君に対して奇問を発する。

「今日は諸君からひやかされにたようなものだ。なんぼ田舎者だって――これでも街鉄(がいてつ)を六十株持ってるよ」

「そりゃ馬鹿にないな。僕は八百八十八株半持っていたが、惜しいに方(おおかた)虫が喰ってしまって、今じゃ半株ばかりしかない。もう少し早く君が東京へてくれば、虫の喰わないところを十株ばかりやるところだったが惜しいをした」

「……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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