「そんなも無かろう」と術(じゅつ)なげに答える。さっきまで迷亭の悪口を随分ついた揚句ここで無暗(むやみ)なを云うと、主人のような無法者はどんなを素(す)っ破抜(ぱぬ)くか知れない。なるべくここは(いい)加減に迷亭の鋭鋒をあしらって無に切り抜けるのが分別なのである。鈴木君は利口者である。いらざる抵抗は避けらるるだけ避けるのが世で、無の口論は封建時代の遺物とている。人生の目的は口舌(こうぜつ)ではない実行にある。己の思い通りに着々件が進捗(しんちょく)すれば、それで人生の目的は達せられたのである。苦労と配と争論とがなくて件が進捗すれば人生の目的は極楽流(ごくらくりゅう)に達せられるのである。鈴木君は卒業後この極楽主義によって功し、この極楽主義によって金時計をぶらげ、この極楽主義で金田夫婦の依頼をうけ、同じくこの極楽主義でまんまと首尾よく苦沙弥君を説き落して該(とうがい)件が十中八九まで就(じょうじゅ)したところへ、迷亭なる常規をもって律すべからざる、普通の人間外の理を有するかと怪まるる風坊(ふうらいぼう)が飛び……(内容加载失败!)
(ò﹏ò)
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