正文 六 - 9

主人は少々談話の局面を展開して見たくなったと見えて、「どうです、東風さん、近頃は傑もありませんか」と聞くと東風君は「いえ、別段これと云って御目にかけるほどのものもませんが、近日詩集をして見ようと思いまして――稿本(こうほん)を幸い持って参りましたから御批評を願いましょう」と懐から紫の袱紗包(ふくさづつみ)をして、その中から五六十枚ほどの原稿紙の帳面を取りして、主人の前に置く。主人はもっともらしい顔をして拝見と云って見ると一頁に

世の人に似ずあえかに見え給う

富子嬢に捧ぐ

と二行にかいてある。主人はちょっと神秘的な顔をしてしばらく一頁を無言のまま眺(なが)めているので、迷亭は横合から「何だい新体詩かね」と云いながら覗(のぞ)き込んで「やあ、捧げたね。東風君、思い切って富子嬢に捧げたのはえらい」としきりに賞(ほ)める。主人はなお不思議そうに「東風さん、この富子と云うのは本に存在している婦人なのですか」と聞く。「へえ、この前迷亭先生とごいっしょに朗読へ招待した婦人の一人です。ついこの御近所に住んでおります。実はただ今詩集を見せようと思ってちょっ……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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