正文 七 - 5

水桶はこのくらいにして、白い湯の方を見るとこれはまた非常な入(おおいり)で、湯の中に人が這入(はい)ってると云わんより人の中に湯が這入ってると云う方が適である。しかも彼等はすこぶる悠々閑々(ゆうゆうかんかん)たる物で、先刻(さっき)から這入るものはあるがる物は一人もない。こう這入ったに、一週間もとめておいたら湯もよごれるはずだと感してなおよく槽(おけ)の中を見渡すと、左の隅に圧(お)しつけられて苦沙弥先生が真赤(まっか)になってすくんでいる。哀(かわい)そうに誰か路をあけてしてやればいいのにと思うのに誰も動きそうにもしなければ、主人もようとする気色(けしき)も見せない。ただじっとして赤くなっているばかりである。これはご苦労なだ。なるべく二銭五厘の湯銭を活しようと云う精神からして、かように赤くなるのだろうが、早くがらんと湯気(ゆけ)にあがるがと主思(しゅうおも)いの吾輩は窓の棚(たな)から少なからず配した。すると主人の一軒置いて隣りに浮いてる男が八の字を寄せながら「これはちと利(き)き過ぎるようだ、どうも背中(せなか)の方から熱い……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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