正文 八 - 11

「ええ、そう云う療法もあります」

「今でもやるんですか」

「ええ」

「催眠術をかけるのはむずかしいものでしょうか」

「なに訳はありません、(わたし)などもよく懸けます」

「先生もやるんですか」

「ええ、一つやって見ましょうか。誰でも懸(かか)らなければならん理窟(りくつ)のものです。あなたさえ善(よ)ければ懸けて見ましょう」

「そいつは面白い、一つ懸けてさい。(わたし)もとうから懸かって見たいと思ったんです。しかし懸かりきりで眼が覚(さ)めないと困るな」

「なに丈夫です。それじゃやりましょう」

相談はたちまち一決して、主人はいよいよ催眠術を懸けらるるとなった。吾輩は今までこんなを見たがないからひそかに喜んでその結果を座敷の隅から拝見する。先生はまず、主人の眼からかけ始めた。その方法を見ていると、両眼(りょうがん)の瞼(うわまぶた)をからへと撫(な)でて、主人がすでに眼を眠(ねむ)っているにも係(かかわ)らず、しきりに同じ方向へくせを付けたがっている。しばらくすると先生は主人に向って「こうやって、瞼(まぶた)を撫でていると、だんだん眼が重たく……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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