正文 九 - 1

主人は痘痕面(あばたづら)である。御維新前(ごいっしんまえ)はあばたも分(だいぶ)流行(はや)ったものだそうだが日英同盟の今日(こんにち)から見ると、こんな顔はいささか時候後(おく)れの感がある。あばたの衰退は人口の増殖と反比例して近き将には全くその迹(あと)を絶つに至るだろうとは医の統計から精密に割りされたる結論であって、吾輩のごとき猫といえども毫(ごう)も疑を挟(さしはさ)む余のないほどの名論である。現今球にあばたっ面(つら)を有して生息している人間は何人くらいあるか知らんが、吾輩が際の区域内において打算して見ると、猫には一匹もない。人間にはたった一人ある。しかしてその一人が即(すなわ)ち主人である。はなはだ気の毒である。

吾輩は主人の顔を見る度に考える。まあ何の因果でこんな妙な顔をして臆面(おくめん)なく二十世紀の空気を呼吸しているのだろう。昔なら少しは幅も利(き)いたか知らんが、あらゆるあばたが二の腕へ立ち退(の)きを命ぜられた昨今、依として鼻の頭や頬のへ陣取って頑(がん)として動かないのは慢にならんのみか、かえってあばた……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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