正文 十 - 8

「ホホホホ旨(うま)いのね。わたしもこれからそうしよう」

「そうなさいよ。それでなくっちゃ損だわ」

「こないだ保険社の人がて、是非御這入(おはい)んなさいって、勧めているんでしょう、――いろいろ訳(わけ)を言って、こう云う利益があるの、ああ云う利益があるのって、何でも一時間も話をしたんですが、どうしても這入らないの。うちだって貯蓄はなし、こうして供は三人もあるし、せめて保険へでも這入ってくれるとよっぽど丈夫なんですけれども、そんなは少しも構わないんですもの」

「そうね、もしものがあると不安だわね」と十七八の娘に似合しからん世帯染(しょたいじ)みたことを云う。

「その談判を蔭で聞いていると、本に面白いのよ。なるほど保険の必も認めないではない。必なものだから社も存在しているのだろう。しかし死なないは保険に這入(はい)る必はないじゃないかって強情を張っているんです」

「叔父さんが?」

「ええ、すると社の男が、それは死ななければ無論保険社はいりません。しかし人間の命と云うものは丈夫なようで脆(もろ)いもので、知らないうちに、いつ危険が逼……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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