正文 十 - 10

「岩崎のような顔ってどんな顔なの?」

「ただきな顔をするんでしょう。そうして何もしないで、また何も云わないで蔵の周(まわ)りを、きな巻煙草(まきたばこ)をふかしながら歩行(ある)いているんですとさ」

「それが何になるの?」

「蔵様を煙(けむ)に捲(ま)くんです」

「まるで噺(はな)し(か)の洒落(しゃれ)のようね。首尾よく煙(けむ)に捲(ま)いたの?」

「駄目ですわ、相手が石ですもの。ごまかしもたいていにすればいいのに、今度は殿さまに化けてたんだって。馬鹿ね」

「へえ、その時分にも殿さまがあるの?」

「有るんでしょう。八木先生はそうおっしゃってよ。たしかに殿様に化けたんだって、恐れいだが化けてたって――一不敬じゃありませんか、法螺吹(ほらふ)きの分際(ぶんざい)で」

「殿って、どの殿さまなの」

「どの殿さまですか、どの殿さまだって不敬ですわ」

「そうね」

「殿さまでも利(き)かないでしょう。法螺吹きもしようがないから、とても(わたし)の手際(てぎわ)では、あの蔵はどうするもませんと降参をしたそうです」

「いい気味ね」

「……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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