主人は座布団(ざぶとん)を押しやりながら、「さあお敷き」と云ったが毬栗先生はかたくなったまま「へえ」と云って動かない。鼻の先に剥(は)げかかった更紗(さらさ)の座布団が「御乗んなさい」とも何とも云わずに着席している後(うし)ろに、生きた頭がつくねんと着席しているのは妙なものだ。布団は乗るための布団で見詰めるために細君が勧工場から仕入れてたのではない。布団にして敷かれずんば、布団はまさしくその名誉を毀損(きそん)せられたるもので、これを勧めたる主人もまた幾分か顔が立たないになる。主人の顔を潰(つぶ)してまで、布団と睨(にら)めくらをしている毬栗君は決して布団その物が嫌(きらい)なのではない。実を云うと、正式に坐ったは祖父(じい)さんの法の時のほかは生れてから滅(めった)にないので、先(さ)っきからすでにしびれが切れかかって少々足の先は困難を訴えているのである。それにもかかわらず敷かない。布団が手持無沙汰に控(ひか)えているにもかかわらず敷かない。主人がさあお敷きと云うのに敷かない。厄介な毬栗坊主だ。このくらい遠慮するなら人数(たにんず)集まっ……(内容加载失败!)
(ò﹏ò)
抱歉,章节内容不支持该浏览器显示~
【为了使用完整的阅读功能】
请考虑使用〔Chrome 谷歌浏览器〕、〔Safari 苹果浏览器〕或者〔Edge 微软浏览器〕等原生浏览器阅读!
谢谢!!!