正文 十一 - 4

「り前さ。君のは打つのじゃない。ごまかすのだ」

「それが本因坊流、金田流、世紳士流さ。――おい苦沙弥先生、さすがに独仙君は鎌倉へ行って万年漬を食っただけあって、物に動じないね。どうも敬々服々だ。碁はまずいが、度は据(すわ)ってる」

「だから君のような度のない男は、少し真似をするがいい」と主人が後(うし)ろ向(むき)のままで答えるやいなや、迷亭君はきな赤い舌をぺろりとした。独仙君は毫(ごう)も関せざるもののごとく、「さあ君の番だ」とまた相手を促(うなが)した。

「君はヴァイオリンをいつ頃から始めたのかい。僕も少し習おうと思うのだが、よっぽどむずかしいものだそうだね」と東風君が寒月君に聞いている。

「うむ、一と通りなら誰にでもるさ」

「同じ芸術だから詩歌(しいか)の趣味のあるものはやはり音楽の方でも達が早いだろうと、ひそかに恃(たの)むところがあるんだが、どうだろう」

「いいだろう。君ならきっと手になるよ」

「君はいつ頃から始めたのかね」

「高等校時代さ。――先生(わたく)しのヴァイオリンを習いした顛末(てんまつ)をお話ししたがありました……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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