長い煙をふうと世の中へ遠慮なく吹きした寒月君は、やがて前同様(ぜんどうよう)の速度をもって談話をつづける。
「東風君、僕はその時こう思ったね。とうていこりゃ宵の口は駄目だ、と云って真夜中にれば金善は寝てしまうからなお駄目だ。何でも校の生徒が散歩から帰りつくして、そうして金善がまだ寝ない時を見計らってなければ、せっかくの計画が水泡に帰する。けれどもその時間をうまく見計うのがむずかしい」
「なるほどこりゃむずかしかろう」
「で僕はその時間をまあ十時頃と見積ったね。それで今から十時頃までどこかで暮さなければならない。うちへ帰って直すのは変だ。友達のうちへ話しに行くのは何だか気が咎(とが)めるようで面白くなし、仕方がないから相の時間がくるまで市中を散歩するにした。ところが平生ならば二時間や三時間はぶらぶらあるいているうちに、いつの間(ま)にか経ってしまうのだがその夜(よ)に限って、時間のたつのが遅いの何のって、――千秋(せんしゅう)の思とはあんなを云うのだろうと、しみじみ感じました」とさも感じたらしい風をしてわざと迷亭先生の方を向く。
「古人を待つ……(内容加载失败!)
(ò﹏ò)
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